テレビ、新聞、ネットでは、尖閣諸島における日本の巡視船と中国漁船の衝突ビデオの流出事件でもちきりである。ほんとうに国民はそんなことに興味があるのか?マスコミが騒ぎ立てるから、なんとなく大変なことで興味をもつべきこと、のように錯覚しているのではないのか?
もちろん正規ルートで流出したものではないため、流出経路の把握、再発防止、情報管理の見直し、といったことは必要であろう。流出に賛否両論あるが、あくまで個人の判断で、超重要情報が流出したことは日本の情報管理上、由々しき問題である。がしかし、である。
国会でも自民党をはじめ、誰の責任、責任取るのか否か、なんで最初から公開しない云々かんぬんである。「日本国の将来」という視点で見れば、すべて不毛な議論であるし、はっきりいって時間とお金の無駄である。冷静に事実をあげてみよう。
・9月7日に日本の領海である(中国は認めていない)尖閣諸島付近で操業していた中国漁船が、日本の海上保安庁の巡視船の警告を無視した上、逃走し、衝突した
・海上保安庁は、この中国船を拿捕し、船長の逮捕及び船員を拘束した
・中国は強硬な抗議を重ね、政治的、経済的な圧力をかけて、船長の即時釈放を要求した
・その根拠は尖閣諸島は中国が保有しているから、である
・日本は、結果としてこの圧力に屈して、24日に船長を釈放した
・その後も中国の日本に対する態度は強硬であり、さらに尖閣諸島を領有を強く主張している
・尖閣諸島の領有権は、周辺海域のガス田の保有関係及び海洋資源の所有権に重大な影響を及ぼす
結果をみると、中国は勝利し、日本は敗退である。しかも完敗である。中国は領有権の既成事実をつくることに成功し、さらに日本にとって中国がどれほど大事かを知ったのである。これに加えて、ロシアの大統領は北方領土に上陸し、北方領土の返還等の交渉は暗礁に乗り上げている。
ここまでくれば、日本の政治家が国会で議論する問題はひとつしかない。経済的、政治的な発言力の低下が続く日本は、今後どうやってその発言力を維持し、アメリカや中国、ロシアといった強国と対等にわたりあえる国をつくるか?である。その議論がまったくなく、「中国が悪い」、「菅首相やめろ」、「流出した人に拍手」、ではまったく問題は解決しない。みんな目の前のことしか頭にないのである。ではこの一連の経過で得した人、損した人はだれか?
(得した人)
・中国の対日本強硬派の共産党幹部
⇒大きな成果を収め、共産党内での発言権を高めることができた
・自民党をはじめとした野党
⇒民主党を徹底的に攻撃するネタを得た
(損した人)
・民主党の現政権の執行部とその周辺
しかしほんとうに損したのは、我々日本人全員である。中国との交渉力が低いことが世界的に明らかになったからである。中国は日本に対して多くのカードを持っている。レアメタルをはじめとした資源や高い経済成長を続ける中国消費市場、労働力、資金力などである。一方で、日本は中国にきれるカードがないのである。問題の核心は「日本が中国との外交に完敗したこと」であり、「ビデオの流出」ではない。我々は、マスコミの報道にだまされず、一人ひとりに冷静な情報の解釈が求められる。国際問題は、情緒で解決できないのである。
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宮﨑 敦史 (月曜日, 15 11月 2010 09:36)
最近領土問題が再燃しているのは、日本海海底にメタンハイドレートという資源が眠っていることが遠因になっているのでは?
という意見をコメンテーターの青山繁晴さんがテレビで言っていました。
もしそうなら、日本政府はすぐに調査を行いその情報を広く国民で共有すべきです。
そうすれば、マスコミでも、国会でももう少し建設的な議論ができるのではないでしょうか?
西ちゃん (月曜日, 15 11月 2010 20:46)
コメントありがとうございます。
なるほど。メタンハドレートという言葉は
初めて知りました。
新しいエネルギー源になる可能性があるが、
採掘コストが現在では経済的に合わないものの
ようですね。
とにかく政党同士の不毛な小競り合いではなく、
真に日本の将来を考えた政治を望みたいですね。