菅総理は新卒者の就職改善に全力で取り組み、ジョブサポーターの充実などの対策を行うらしい。焼け石に水の感は否めないが、今年も大学生、高校生の就職環境が厳しく、就職できない学生が現時点で大量にいる。企業の収益環境が悪いため、採用数を減少させていることも理由の一つであろう。製造業の新規学卒者の採用は、2009年においてはピークの1992年の半分以下である。もちろん、求職者数の母数が減少しているため、単純比較はできない(2009年は1992年比7割程度である)。
しかし、若年層の雇用環境の悪化はバブル崩壊後の93年頃から継続していると考えられる。その結果として、若年層の非正規雇用率、失業率が大きく上昇している。2009年の統計上は、15~24歳の約4割は非正規雇用、25~34歳の約2割が雇用不安定状態(失業率+非正規雇用率)である。
労働の供給側から見ると、学生という供給源と競合する存在が多いことも、学生の就職環境を悪化させていると見る。それは2つあり、ひとつは女性の派遣・パートを中心とした30歳以上の女性群、もうひとつは60歳超の高齢者群である。小売業、サービス業を中心に企業は女性のパート・アルバイトを活用してきた。女性側においても、男性の所得水準の停滞、社会の価値観の変化による働く意欲の向上などを背景として、結婚後や出産後も働く女性は大きく増加した。高齢者においては、定年延長、年金の支給開始年齢の引き上げなどにより、リタイア後も働く男性は増加した。
見方を変えれば、上記の2つの供給源は企業から見て、相対的に低コストである。女性群は、派遣やパート・アルバイトの短期雇用であり、雇用調整が容易に可能であり、コスト負担も小さい。高齢者群においても、退職後の雇用延長は1年契約の形態が多いため、雇用調整が容易であり、リタイア後の賃金は現役時の1/2~1/3程度の水準が多いようである。これに比べて、若年者は雇用調整が困難である。だから、若年層においてもそれが可能な派遣社員やパート・アルバイトなどの形態の比率が高くなってしまうのである。
あくまで企業の経営者から見れば、新卒の若年者は最低限度の採用に抑え、それ以外は、景気動向により変動費化できる女性群や高齢者群を最大限活用したいという動機を持つことは想像に難しくない。学生の採用についても、以前であれば有能な人材の比率が高かった大卒者は、大学進学率の上昇に伴い、有能人材の比率は低下しているはずである。すなわち、採用リスクは高まっている。
もちろん、新卒者の就職環境の悪化に影響を与えている要因はこれらだけではない。需給のミスマッチ(人材、産業、職種等)、学生の大企業志向、価値観の変化など、多くの要因が複雑に絡み合っている。
いずれにせよ就職環境が悪いことは大卒進学率を押し上げ、就職開始年齢を将来へずらし、就職へ有利な大卒者という資格を取得することへ人々を向かわせる。しかしながら、大学進学者においても就職が難しい事実は、高校卒業後の選択肢を再考する機会になっているように感じる。大学進学のために多くのコスト(機会損失を含めて)を使うのが、学生にとっても、企業にとっても、果たして良いのであろうか?
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