人は常に過去の経験や自分の思考の癖、そして自分が既に知っている周辺情報により、ある物事に対する予想をし、それをほぼ決まったものとみなしてしまう。そして、場合によっては、その自分で出した予想が事実であるとして、本当の事実を見ることなく、その予想に基づいて行動してしまう。
例えば、金曜日の夜、あなたの子供が「くら寿し」へ行きたいと言った場合、あなたはこう考える。「土曜日や日曜日の夜、くら寿しは超混んでいた。金曜日も土日ほどではないにせよ、どうせ混んでいる」。そして子供に、「今日はやめておこう。くら寿しはいつも混んでいるから、お父さん、今日はしんどいよ!」。子供はまたこう続けるであろう。「行ってみないと分からないよ!」。そう、事実は行ってみないと分からないが、自分の想像はほとんど事実であり、だから本当の事実を見るまでもない、と結論付けるのである。
私は今日、ある物件についての現地視察をした。それまでに私が得た情報は以下である。
①依頼人からの概略
②自分が調べた立地情報(人口、年代構成、競合や関連店舗、道路状況など)
③①と②から自分が想像した商業環境
私は、この情報によって、この物件は「良い物件ではない」、従って、NG立地であると自分の答えを出した。念のため物件を見ておこうと現地視察と相成ったが、そこで私の予想が大いに違っていたことを知った。その間違いの原因は、主に私の思い込みと「情報の素直な受け取り方」にある。市場の姿は、それを分析可能な情報に依存するものではなく、様々な要因が複雑に絡み合い、そして結果として売上や利益、集客といった数字に現れる。だから、その結果の変数となるものを当たり前のものとして決めるつけることは危険なのである。そして思い込みは、最初は想像であるものの、人はその想像を肉付けする情報を探し、その情報によって肉付けされた想像は、いつの間にか自分の中でほぼ事実に変わってしまう。
思い込み、独りよがり、視野の狭さ、短期的思考、情報不足、裏を取っていない分析や情報、自分のおごりや過大評価などなど、これらはすべて「素直にモノを見る目」を奪ってしまう。事実を見る前に、事実を見ることをやめてしまわないようにしたいものである。
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