続・高齢化の問題を考える

 さて、「高齢化は問題か?」の続きである。高齢化によってどんな問題があるのであろうか?

①医療費用の増大、年金負担の増加により国及び国民の負担が重くなる
②労働力人口の構成比が低下するため全体所得が減少し、税収が少なくなる
③活力消費となる世代の構成比が低下するため消費が減る
④高齢者の多い社会は若者の多い社会に比べて保守的であり、活力が低下する
⑤高齢者を狙った犯罪が増える
⑥人口減少により経済的な国力を表すGDPが低下する

 

 現在、大きな問題と認識されているのは①と⑥であろう。高齢化による人口減少は、少子化によって大幅に進展する。少子化によって、国民の年齢構成が変化し、そのことによって若者世代や現役世代の構成比が低下し、高齢世代の比率が上昇するのである。高齢化がすぐに人口減少につながるわけではない。人口減少は長期的な対策が必要なのもであり、短期的に解決はできない。

 

 人口減少よりもむしろ、国民を不安にさせているものは高齢化による現役世代の負担の増加や、自分が高齢になったときに受け取ることのできる年金額の見通しについてである。高齢者に対する医療費や年金負担は現在でも目に見えて上昇しているし、今後さらに負担が大きくなることを現役世代や若者世代は知っている。

 

 1人あたりの負担率=もらえる人÷負担する人

 

 上記の算式で分子(もらえる人)は増加し、分母(負担する人)は減少する。さらに分母についても、所得が増加しないためさらなる負担に耐えられる余地はなく、フリーターや無業者の増加は負担する人を減らす。従って、負担する人(負担できる人)の負担は年々増加するのである。

 

 負担率を下げる方法は2つある。1つはもらえる人(金額)を減らすことである。それは支給開始年齢の引き上げや支給金額の引き下げである。もう1つは負担する人を増やすことである。これには少子化対策や課税対象と負担対象の拡大(非正規労働者への負担範囲の拡大、最低課税所得の引下げ)、負担率の引き上げである。どちらにも限界があり、遅かれ早かれ破綻してしまうことが容易に想像できる。しかしながら政府が実行しているのはこれである。しかも大きな効果が望めそうにない手段を取っている。

 

 さて自説であるが、盲点として、もらえる人が自らもらえる金額を減少させる仕組みを導入してはどうであろうか?現在は、働けば年金が満額もらえないために働かない、あるいは必要以上に働かない動機となっている。収入を稼げる層には、働かないで年金をもらうよりも、働いた方が得である制度にすれば良いのではないか?

年金の考え方
年金の考え方

 上の図を説明する。考え方として、所得に応じて年金受取額は一度減少するが、さらに所得が増加すれば受取額を増加させる仕組みをとっている。ここで所得とは、年金以外の労働所得を意味する(不労所得を含まない)。

 

①満額支給層
所得を得ず、年金のみで生活する。資産がない場合、つつましい生活を送る。

 

②一定収入を得る層
年金満額をあきらめ、生きる意味としての仕事を持ち、年金+所得で年金満額以上の収入を得る。この層は出来るだけ多くの所得がある方が得であるため、より高い所得を得ようという動機を持つ。よって③を目指す。

 

③高所得層
年金の一部をあきらめるが、比較的高い所得を持つ。高い所得を維持することが、トータルで得のため、年金の一部をあきらめるが、損失を最小限に抑制できる。よって満足度が高い。

 

 もちろんそんなに単純なものではないであろう。高齢層が今よりも多く労働者としてとどまれば、若者の雇用を奪ってしまう恐れがある。しかし、抜本的な改革がなければ問題は解決しないのであるから、生みの苦しみ、変革の苦しみがあったとしても、将来の活力ある日本を目指して、新しいことに取り組むことが必要である。それは国、政治家、企業、国民のすべてが考えなければならないのである。

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