佑ちゃんフィーバー

 とにかく「佑ちゃんフィーバー」である。キャンプ前の自主トレから二軍の練習場には人がつめかけ、キャンプ地も佑ちゃん目当ての客でごったがえしである。日本人の集団心理の一種であり、興味深い。同じような例として、AKB48に対する過熱や少し古いが韓流映画・俳優ブームがある。

 人が集まる場所・話題に、より人が集まる。いつも人が並んでいるラーメン屋に自分も並びたくなるものであり、実際にサクラを使うことでそういったイメージをつくるプロモーション手法も定着している。「みんなが良いと言うのであれば、良いに違いない」と思って自らの判断を下すものであり、先入観のなせる業とも言える。その先入観を人為的につくりだすことで、人の購買決定を自分の都合の良いように突き動かすことが可能になる。

 

 さて佑ちゃんフィーバーに話を戻そう。彼は高校3年のときの夏の甲子園で注目を浴びる存在となった。ハンカチ王子というニックネームがつき、彼に対するイメージは、「さわやか」、「礼儀正しい」、「クリーン」、「男前」、かつ「実力がある」といったものであろう。高校時代の記者会見で、退場するときに他の人の椅子を戻した態度が好感されるなど、やることなすこと、ほとんどが人気の種となっている。

 

 マスコミの報道の偏りにも起因するが、今回のフィーバーで目立つのはいわゆる「おばちゃん」ファンの存在である。遠路はるばるキャンプ地に訪問したり、興奮状態覚めやらぬ姿が映し出されている。なぜ「おばちゃん」はこれほど燃えるのか?無論、佑ちゃんのイメージもあるがそれだけではない。その答えはコントラスト、対比にある。それは、「だんなの生活観丸出しの姿、きたない、くさい、えらそう、甲斐性なし、役に立たない、etc.」のイメージとの対比である。

 

 それらと比較することで、テレビに映る佑ちゃんの姿、イメージに一種のあこがれを抱くのである。それに加えて、みんなが佑ちゃんを見に行っていることは、自分も見に行く理由の大義名分となる。また俳優や芸人といった芸能人はどこに行ったら会えるか分からないが、プロ野球選手ともなれば、今回のようなキャンプ地、練習場、試合に行けば高い確率で「生の姿」を見ることができる。お金も交通費だけで、見るためのお金はそれほど必要ない。

 

 それは、「手が届きそうな存在」、としての偶像(アイドル)なのである。それが佑ちゃんでありAKB48であり、読者モデル、なのかもしれない。

 

 もちろん日本ハムやキャンプ地、関係者には良い話である。AKB48といった商売道具であれば、それは当人からも望むことであるが、野球選手であれば話は少し違う。当の本人は落ち着いて練習ができないわけであり、慣れているとは言え心理的な圧力もあろう。従って、本当は静かにしていてほしい、のが願いであろう。しかし、それは言えないし、言えないからこそ、クリーンなイメージである所以もある。結局、ファンというのは、その偶像自身のことよりも、自分の欲求を満たすことが優先されているのである。

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