(続)少子化対策の考え方

 すっかり久しぶりとなってしまったが、前回の続きを考えてみたい。すなわち、『②現在すでに結婚している夫婦に、出来るだけ多くの子供を持ってもらう』である。現在の出生数の低下は、シングル化(結婚しないため子供が生まれない)と晩婚化にその理由が求められる。もちろん、子供を持たないことや多数の子の出産を望まないなどの価値観の変化もその要因と考えられるであろう。

 さてここで、婚姻女性の期待出生数をモデル化してみよう。今回は以下のように考えてみた。

 

婚姻女性の期待出生数=①40歳までの残存期間×②子供を作るための行為の回数×③妊娠率×④無事出産率×⑤1回あたり出産数(双子などにより1超になる)

 

①結婚した年齢から40歳までの残存期間が長ければ長いほど、期待出生数は高くなる
 2009年の出生数を見ると、39歳以下の女性が97%の子供を産んでいる。即ち、概ね女性が子供を生むことのできる年齢を40歳と考えることができる。従って、できるだけ若い年齢で結婚すればするほど、期待出生数は上昇する。例えば、25歳で結婚した女性の場合、40歳までは15年あるが、35歳で結婚した女性は5年となる。子供をつくることのできる期間が長ければ長いほど、出生数が上昇することは容易に理解できる。

 

 一方で、若い年齢で結婚すればするほど、離婚率が高くなる可能性がある。18歳で結婚した場合と30歳で結婚した場合では、前者の方が離婚率が高いことも想像できる。従って、残存期間が長くても、途中で離婚すれば、残存期間が有効に活用されないことも考えられる。

 

②子供をつくるための性行為の回数が多いほど、期待出生数は上昇する。

 子供を作りたくない場合は避妊をするため、期待出生数は落ちる。従って、子供を作りたいと夫婦が思うようになればなるほど、この回数は増加する。その要因は、例えば、将来の給与上昇期待や子育てしやすい社会の構築がプラスの影響を及ぼすかもしれない。

 

 とはいえ、子供をつくることを目的とした性行為の回数は、やはり①に大きく左右されそうである。例えば、40歳まで15年の夫婦と5年の夫婦では、前者の方が『子供をつくることを目的とした性行為の回数』は多くなりそうである。

 

 できちゃった結婚は、婚前男女の避妊をしない、あるいは失敗した性行為により妊娠に至り、結婚する理由となるため、ある意味では、早期結婚を促す要因となりうる。逆に熟考しての結婚でないため離婚率を高めて、結局残存期間は同じかもしれない。

 

③妊娠率は25歳前後がピークである
 そのため、①の影響を大きく受ける。女性の平均初婚年齢はピークを大きく超えており、①と相まって出生数の低下に大きな影響を与えている可能性は否定できない。

 

 また不妊治療の技術向上や低コスト化などによってもこの数値は上昇する。

 

④無事出産率
 これは産婦人科医の量、質の向上により上昇する。現在、産婦人科医の量の不足が問題化している。量の不足は当然に質の低下を招いてしまう。

 

 しかしながら、この数値も年齢に左右されてしまう。30歳を超えれば出産リスクが徐々に高まってしまう。

 

⑤出産年齢が高齢化するほど1回あたりの出産数は増加する
 体外受精等の不妊治療は複産(双子、三つ子など)を増加させるため、この数値を増加させる。高齢になればなるほど③により妊娠率が低下するため、不妊治療の患者数が増加し、それは1回あたりの出産数を増加させることになる。

 

 さてモデル化した式の①~⑤までを簡単に説明したが、違和感があるであろう。この式は、統計学的に言えば、各変数は独立ではない。例えば、②、③、④、⑤の変数はすべて①の変数の影響を受けている。25歳の夫婦と35歳の夫婦がいるとしよう。この場合、25歳の夫婦は①~④までは有利であり、⑤のみ35歳が有利(?)といえそうである。

 

 そう。結局は、出生数を上昇させるには、女性に早く結婚してもらうしかないのである。男女共に初婚年齢は上昇しているが、その上昇は女性が男性よりも大きい。

 

男性:1980年28.7歳 ⇒ 2005年31.1歳 ⇒ 2.4歳の上昇
女性:1980年25.1歳 ⇒ 2005年29.4歳 ⇒ 4.3歳の上昇

 

 さてではなぜ女性は早く結婚しなくなったのであろうか?このテーマはまたいずれ取り上げよう。

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