電力供給危機

 東北地方太平洋沖地震の被害者は増加する一方であり、また被災者の方々には物資の輸送の遅れ、悪環境での生活の長期化、それによる精神的ストレス拡大など、状況はまったく改善していない。少しでも早く、事態が改善するのを願い、そして自分が出来ることをやりたいと考えている。ところで、福島第一原子力発電所の状況は悪化の一途をたどっており、世界中を不安にさせている。もちろん、この問題は非常に深刻だが、電力供給の不足の事態もまた長期化する。今回はこの電力供給問題について分析してみたい。

 今回は東京電力に限っての分析である。東京電力は、首都圏1都7県(群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨県)、静岡県の一部に対して電力を供給している。下記の表が、2009年度の東京電力の発電設備別の認可出力と発電電力量である。概ね、認可出力とは、各発電設備の1時間当たりの最大出力量を、発電電力量とは生産した電力という意味である(正確な定義は若干異なるかもしれません)。

発電設備
発電設備

 発電電力量の合計は、東京電力が販売した電力量である。これを見ると、全体のうち、原子力が28.9%、火力発電が57.5%を担っていることが分かる。発電設備は、それぞれに役割がある。というのも、電力需要は一日のうちに均一化しているわけではなく、例えば夏場であれば朝6時頃から需要量が増加し、概ね11~15時がピークであり、その後夜にかけて徐々に需要量は減少する。もちろん、季節によっても異なり、7~8月の需要量がピークであり、1~2月がそれに続いて需要量が高まる。

 

 そのため、電力供給も需要に応じてコントロールされる。それは大きく3つに分けられる。

 

①ベース設備:需要量に関わらず、均一化して発電する
②ミドル設備:時間帯や季節などの需要量によって増減があるが、ベースにプラスされて発電する
③ピーク設備:需要のピーク時に発電することが意図されており、需要量の少ないときはあまり発電しない

 

 単純化すれば、ベース設備に該当するのが原子力発電、ミドル設備に該当するのが火力発電、ピーク設備のそれが水力発電である。以下は東京電力が保有する原子力発電所である。それは3つあり、そのうちこの地震で福島第一及び第二の稼動が止まっている。そして柏崎は事故以来稼動が止まっていたが、2009年度から6号機及び7号機が稼動し、その後1号機と5号機も稼動している。

東京電力が保有する原子力発電所
東京電力が保有する原子力発電所

 それに加えて、今回の地震では、5発電所9基の火力発電所が停止している。これは715万kwの出力に相当する。原子力発電所の福島第一及び第二に、この火力発電所の停止分を推定して計算すると、以下のようになる。

 

2009年度の発電量
①福島第一:329.5億kwh
②福島第二:328.1億kwh
③停止した火力発電所:301.8kwh
(停止火力発電所が、全体の火力発電所に占める割合:715÷3818.9=18.7%
停止火力発電所の2009年度の発電量の推定値:1612億kwh×18.7%=301.8億kwh)
④合計:①+②+③=959.4億kwh

 

 959.4億kwhが今回の地震により、失われた電力供給である。これに、現在は稼動している柏崎原発の1号機及び5号機、そして2009年度は稼働率の低かった6号機、7号機による供給増は以下の通りとなる。稼働率を80%とした。


①1号機:110万kw×24時間×365日×80%=77.1億kwh
②2号機:110万kw×24時間×365日×80%=77.1億kwh
③6号機:135.6万kw×24時間×365日×80%-65.4億kwh=29.6億kwh
④7号機:135.6万kw×24時間×365日×80%-85.8億kwh=9.2億kwh
⑤合計:①+②+③+④=193億kwh

 

 失われた発電量である959.4億kwhから、新たな供給源である193億kwhを差し引くと766.4億kwhとなる。結果として、今回の地震により、2009年度の発電量の27.4%(766.4÷2802)に相当する電力供給が失われたことになる。この失われた発電量を、残った火力発電所の稼働率を高めることによって吸収しようとすれば、以下のようになる。

 

①残存火力発電所の出力:3818.9-715=3103.9万kw
②残存火力発電所の最大発電量:①×24時間×365日=2719億kwh
③残存火力発電所の必要稼働率:(1612+329.5+328.1-193)÷②=76.4%

 

 さて、これが可能かどうか?上記で述べたように、電力需要は均一化していない。だからピーク需要に対応することは困難であろう。現在、計画停電が実施されているが、これは今後も長期化することが確実である。4~5月は需要が比較的少ないため、落ち着くことが予想されるが、6月頃から再び発生する可能性が高い。

 

 そしてもう一つの問題はコストである。上記で発電設備には役割があると記載したが、それらはコストも考慮したものである。東京電力も会社であるから、その電力の生産に対する原価を下げることが必要となる。コスト効率の高い原子力発電の大部分を失ったため、火力発電に大きく依存することになる。火力発電の燃料は石油やLNG、LPGなどのガスを使用する。これらはいずれも価格が不安定であり、そして現在も上昇している。従って、今後、電力料金は大きく値上げせざるを得ないこととなる。

 

 電力供給については、現在使用していない火力発電所の再稼動や他の電力会社からの融通により、影響を最小限にする努力が図られるが、ベースとなっていた低コストの原子力発電所を埋め合わせることは不可能である。もちろん、原子力発電所の再建設や新しい認可は不可能であり、現在建設中の原子力発電所もすべてストップする。今後、省エネ関連の需要が大幅に高まることは間違いない。

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