レベル7の衝撃

 震災から既に1ヶ月が経過したが原発問題は解決の糸口すら見えない。そしてついに、原発事故の評価尺度で最悪を意味する「レベル7」に決定した。経済的影響は非常に大きなものになるであろう。「あのチェルノブイリ」と同じレベルなのである。マスコミであまり大きな取り扱いとなっていないことに、私には違和感がある。メガトレンド中のメガトレンドについて考えてみた。

 さてどんな影響が考えられるか?まず、農産物や海産物、畜産物などの食品が受けるダメージは甚大である。福島県で作ったもの、福島県の近隣で作ったものは誰も買わない。福島県を含む東北地方の復興については、日本中が支援する。しかし、放射能を浴びた疑いをぬぐいきれない食品を好んで買う人は少ない。当然、食品の輸出は数十年無理である。インドは既に4月6日の時点で、日本からの食品の輸入を全面禁止にしている。ということは、もう福島県で食品を生産することはできないと考える。想像してほしい。近所のスーパーに売っている食品が「チェルノブイリ産」であるものをあなたは買うであろうか?

 

 そして、当然、居住地域としての価値も下がる。見えない放射能について、マスコミや学者の言っていることがどれだけ信用できるのであろうか?多くの人々もそう思っているはずであり、そのことは、多くの人の神経過敏という行動につながってしまう。年配者であれば、その地に住み続ける選択も考えられるが、若い人や子供を持つ人はその地を離れる選択に向かうのではないか?

 

 加えて、多くの企業は福島県で事業をすることが難しくなる可能性が高い。自動車であれ、機械部品であれ、家電であれ、福島県で生産されたものを海外の消費者や企業は非常に厳しい目で見る。輸入拒否や販売不振となることを想像することは難しくない。レベル5の時点で、関東から出港したタンカーでさえ、海外の目的地で荷物を降ろすことが許されなかったのである。だから輸出企業にとって、福島県で生産すること自体が短期的なリスクにさえなり得る。

 

 日本の内需企業にとっても、福島県は企業の撤退、人口の減少、イメージ悪化により、消費市場としても、労働市場としても、調達市場としても、メリットのほとんどが消失あるいは減価する。

 

 結果として福島県の経済活動の減少は、復興後においても1割、2割といったレベルにとどまらないと推測する。そして日本への旅行客の減少は福島県だけにとどまらない。当分、海外客の多くは日本に来ない。もし、ロサンゼルスでレベル7の原発事故があった後に、ラスベガスに旅行に行くのん気な日本人がいないのと同じである。さらに、日本が盛んに売り込みをかけていた原発の海外セールスも泡と消えた。日本から原発を買う国がいたら奇跡である。
 
 国際機関が風評被害を抑制するような指標を設定したとしても、グローバリゼーションの時代には、代わりの製品などいくらでも存在する。レベル7は日本経済の復活の大きなハードルとなるであろう。その難しい国の舵取りを、民主党が行うことはまた、我々にとっての大きな不幸である。このメガトレンドについては今後も考えてみたい。

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