今回はある意味でメガトレンドといえるAKB48を独自の視点で考えてみた。テレビ欄や雑誌の見出しにAKB48が出ない日はない。とにかくすさまじい人気のようである。AKB48を2年前、3年前どの程度の人が知っていたか?おそらく火がつきだしたのは2年前くらいであろうか?あれだけよく耳にする「会いたかった」は2006年10月発売で4年以上の前の曲である。AKB48は2006年頃から活動していたが、当初は全国レベルで考えると売れていなかったようである(秋葉原でどうかは知らない)。それが昨年ぐらいからドミノ倒しのように勢いがつき、あっという間にトップアイドルになった。このドミノ倒しのような人気の勢いは以下のようなメカニズムである。
ある程度の人気を獲得し小さな話題になる → 露出が増える → 多くの人の目に触れる → ファン、人気が増える → さらに露出が高まる
同じようなポジションにいたのがモーニング娘である。私の記憶ではおそらく1999~2002年をピークに、こちらもまたすさまじい人気を誇った女性アイドルの大人数グループである。その後も一定の人気を誇っていたが、不祥事が絶えず、今ではやっているの?と思えるほど、露出が大きく減少した。この業界において勝者は2人(グループ)もいらないようである。
モーニング娘は長期間にわたり女性アイドル界を引っ張ってきた存在であるが、メンバーのスキャンダルやできちゃった結婚などにより主要メンバーが流出したり、それに代わるスターをつくることが困難だったことなどにより、人気は失速した。要は、「あきられた」のであろう。
そしてAKB48である。とにかく男性は、チャーミングな若い女の子に非常に弱い。幼い歌詞(高校生風)、無邪気な笑顔、健康的な体、そして制服の「とりこ」になってしまうのである。ある程度の中年の男性でも、AKB48を見て、不愉快になる人は少数である。「なんか見てたら楽しいよね」とか「かわいいやん」となりやすい。「アイ ウォン チュー ♪ ~」はとにかく分かりやすいし、覚えやすく、それがかわいらしい大勢の女の子がプラスされるとウケる確率が高まる。
以下はAKB48のシングル売上枚数ランキングであるが、2009年以降に大きくセールスが拡大し、出すたびにセールスが上昇する様子が垣間見える(新しい曲ほどランキングが総じて高い)。
AKB48やモーニング娘のような女性アイドル大人数グループとして、私が中学生時代に夢中になったのがおニャン子クラブである。おニャン子クラブも私が14~16歳くらいまでの間に人気を独占した。さて、このような女性アイドルグループの利点として、以下が挙げられる。
・人数が多いため、色々なタイプの女の子を品揃えできる(顧客ターゲットを広く持てる)
・定期的にメンバーを入れ替えることが可能であり(少人数の場合はファン離れになる場合があり、リスクが高い)、新鮮さを保持できる
・当然、メンバーの入れ替えにより、グループとしての年齢をコントロールできる(全員が20歳を超えるようなことにならない)
・1人では成立しないアイドル候補を束ねることにより、ビジネスとして成立可能性を高めることができる
・加えて、それにより市場を独占することで、競合グループの参入余地を狭めることができる
・メンバー間の競争を煽ることで、グループの実力をボトムアップできる(アイドルになるような女の子の特性として、負けず嫌いはほぼ備わっていると推測する)
要は女性アイドル大人数グループはビジネス視点で見ると、変動費比率が小さく、固定費が高い収益構造である。そのため、その固定費を超えた瞬間から、利益率が大幅に高まる。売上を増す仕組みが大人数グループである。ミリオンセラー(それに準ずるような売上)を連発するようなバンドや歌手は、やはり一定の実力がないと現実化できない。なぜなら消費者は、情緒よりもむしろ機能性(作品として良いという意味)を評価するからである。例えば、サザンオールスターズや浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、ミスターチルドレン、いきものがかりなどは、情緒だけで長期間、売れ続けることは難しいのが想像できる。しかし、アイドルは100%情緒で訴求する。
もちろん情緒で訴求しても、短期間で終わるし、その中でもメガヒットにつながる可能性は非常に低い。そのため、情緒を長続きさせ、情緒を束ねて、セールスを拡大する仕組みが女性アイドル大人数グループなのである。女性アイドル大人数グループの構成員の人件費は、ほぼ無視できる程度であろう。売れない時期は最低限で本人も我慢する。作詞・作曲も基本的には印税契約であるため変動費になろう。それらはプロデューサー(例えば秋元康やつんく)が内製化すれば、さらにリスクが低減する。女性アイドルグループは、小額投資で、大きなリターンを期待できる「ローリスク・ハイリターン」の商品なのである。しかしながら、その投資に参加できる人は超少数である。
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