日本相撲協会

 大相撲は朝青龍問題、大麻、野球賭博、そして八百長事件と不祥事が続いている。今年は正式な「本場所」も開催できず、組織の存続の危機に立たされている。考えてみれば、大相撲は国技として優遇され、国民の一定の関心を引き付け、長らく独占的な事業をしている。若貴フィーバーや朝青龍などの人気力士の有無により浮き沈みはあるものの、プロレスやK1などの格闘技に比べて楽な商売を続けているようにも思える。

 しかしながら上記のようなスキャンダルが連続して発生し、日本相撲協会は4期連続で赤字である。4期連続すると合計で49億円の赤字になっている。傾向としては、例年110億円前後の経常収入、115億円前後の経常費用である。経常収入の8~9割は本場所によるものであり、本場所を開催できない現在は、収入が激減するため、かなり厳しい収益状況にある。経常費用は多くを人件費が占めており、22年度の人件費は76億円と経常費用合計の約7割である。20年度に赤字が膨らんだのは、世界経済危機による株価下落の影響を受けたようで14.3億円の金銭信託等の評価損を計上しているからである。

 一方、財政状態についてのポイントは以下の通り。

・無借金経営
・負債の多くは退職給付引当金であり、外部に対する負債は6.3億円と小規模企業並み
・毎年の赤字累積で縮小しているが正味資産は487億円
・正味資産の大部分は事業会社において剰余金に該当するもので424億円
・資産は現金が28億円、両国の土地が94億円
・特定の目的のために計上される引当資産と呼ばれるものが270億円

 

 引当資産は減価償却資産や退職給付などのために引き当てられているが、ほとんどが金銭信託や国債で運用されている。退職給付のためのものを除いても213億円であり、他に国技館改修基金と呼ばれるものが48億円計上されている。それらのうち国債は113億円を保有している。

 

 資産の大部分は換金しやすいものが多く、換金が難しいものは建物やその他固定資産の一部に限られる。相撲協会の資産内容は未だに健全性を保持しており、1年程度収入がなくても、資金繰りには窮しないと推測される。

 

 相撲協会の経営については、10人前後の理事があたっている。その理事を選ぶのは年寄に代表される親方や元力士である。マスコミで報道される親方や理事は、どこか浮世離れした人も多く、彼らがあれだけの資産を抱える組織を動かしているのもなんとも恐ろしい。理事は立候補制になっているが、一門の間での理事数の割当てや一門内での調整により、実質的に理事を決定している。貴乃花がそれを無視して立候補したことにより、もめたことは記憶に新しい。

 

 いずれにしても、年寄は相撲界で一定の発言力や存在感を持つとともに、あれだけの資産と収益の権利を有する相撲協会の株主に近い存在となる。年寄株は数億円で売買されているとの報道があったり、親子間で譲渡あるいは相続されているようだ。また年寄株を保有する親方は、息子が相撲取りにならない場合、弟子と娘を結婚させることが未だに当然のように行われているようだが、一家を守る財産である相撲協会の株主権を守るための行動にも写る。そして娘と結婚させた場合、弟子は親方の養子になっていることが多いようである。

 

 一連の不祥事においても、外部の委員などを介入させることに彼らが抵抗するのは、当然の既得権益に危険が及ぶからであろう。不祥事で相撲界を去った大関や親方の損失は数10億円に上ると計算できる。不祥事の代償は驚くほど巨額である。

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