AKB48に見る「個」と「チーム」の微妙なバランス

 昨日は、AKB48の「総選挙」だったらしい。ルールがよく分からないのが残念だが、要はファンによる人気投票である。1位になるとセンターで歌えるという栄誉を獲得できる、となっている。その総選挙は日本武道館で行われ、ネットもテレビもかなりの時間を割いて取り上げていた。もはや社会現象の域に達しているが、今回はこの「総選挙」から学べる「個」と「チーム」について独自の視点で考える。

 本気かどうか分からないが、順位を発表されたメンバーは1人ずつファンに対する感謝の意を表明していたが、その中でも、グループであるAKBに対する帰属意識の高さが伺えた。帰る家が「AKB48」であり、その中で存在感を出せる「個」になることを当然に望んでいるわけである。

 

 この人気投票という仕組みは、使い方を間違えればメンバー間のあつれきを生みそうであるが、うまく競争を煽りながら、チーム全員をボトムアップさせて、さらに結束を高める効果があるのかもしれない。組織を考える場合、常に「個」の力と、個が全員集まることで生み出す「チーム」の力がある。「個」の力が強ければ強いほど、「チーム」の力も強くなりそうであるが、あまりに強い複数の「個」が反作用すると、お互いに力を打ち消しあい、「チーム」として良い結果が出ないことの方がむしろ多い。

 

 逆に弱い「個」の集合は、その「個」の単純合計未満の救いようのない「チーム」になってしまう。「個」と「チーム」のバランスが取れていないと、「個」の単純合計以上の結果を「チーム」が残すことが出来ない。

 

 例えば、プロ野球において、15年くらい前に巨人の長嶋監督がフリーエージェント制度により、他チームの有力選手を買い漁り、スーパーチームを作ったことがある。名前だけ見れば、毎日10点入りそうな打線であるが、結果は芳しくなかった。強い「個」が多すぎると、組織には反作用の力が働き、メンバー全員が同じ方向を向けない組織になってしまう。その結果、「個」の力が「チーム」の力に素直に作用しないため、「チーム」の結果が出ない。現在の阪神も同じような状態に陥っている可能性がある。城島、金本、新井、マートン、ブラゼルといった多数の強い「個」の存在が、「チーム」としての力を奪ってしまう。

 

 逆に「個」の全員が弱い「チーム」の場合(現在のモーニング娘が該当するかもしれない)、チームを引っ張る「個」がいないため、ボトムアップが実現できず、そのまま埋もれてしまう。現在のプロ野球でいうと広島が該当する。

 

「個」=「チーム」:「個」と「チーム」のバランスが良い状態
「個」>「チーム」:強い「個」が「チーム」に勝ってしまう状態
「個」<「チーム」:弱い「個」が「チーム」に負けてしまう状態

 

 これは会社組織にもそのまま当てはまる。会社組織を変革に導いたり、一つの方向にマネジメントすることは、強い「個」の存在なくして実現しない。一方で、弱い「個」は強い「個」に導かれることで、「チーム」に貢献することができる。だから、もし強い「個」がいない場合、弱い「個」はその貢献力を発揮することができない。しかし、繰り返しになるが、強い「個」が必要以上に存在した場合、「チーム」の力が分散する。強い「個」は決して、他の強い「個」にその方向性を依存しないからである。

 

 話を戻せば、多人数から構成されるアイドルグループは、10人に対し1~3人程度の人気のあるメンバーの存在が落ち着くのではないか?例えば、おニャン子クラブの最盛期は、約20~25人程度で構成していたが、人気があったのは、新田恵利、河合その子が初期であり、その後、国生さゆり、高井麻巳子、渡辺美奈代、渡辺満里奈などが続いた。人気のあった頃のモーニング娘も同じようなバランスが取れていたと推測する。そして、グループの人気が高まり、強い「個」が増加してバランスが崩れそうになれば、「卒業」させることでそのバランスを維持することが重要になる。アイドルグループも会社も、強い「個」の流動性が、持続的な強い「チーム」を生み出すのかもしれない。

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