少子化分析パート2(要因別分析)

 またまた少子化についてである。しかし今回はメガトレンドである少子化の背景ではなく、少子化につながっている直接的な要因を分かりやすい数字をもとに分析している。その上で、新聞やニュースで言われている「今ひとつ納得を感じにくい直接要因」について数字を持って証明したい。

 直接要因とは、その数字自体が変化することで、アウトプットの数字を変化させるものを言う。間接要因とは、その直接要因に影響を与える要因であり、直接要因を介して、アウトプットの数字を変化させる。例えば、高齢化を考えると、平均寿命の長期化は直接要因の一つとなる。その平均寿命を長期化させる医療の進歩や食糧事情の改善といったことが間接要因となる。

 

 少子化の分かりやすい直接要因は、以下のモデル化で明らかになる。アウトプットは出生数である。「少子化=出生数の減少」を意味するからである。

 

(20~39歳の女性による出生数)=(20~39歳の女性人口)×(20~39歳の女性1人当たりの出生数)

 

 ここで、「20~39歳の女性1人当たりの出生数」は非常に小さな値となるため、より理解しやすい数字として、「20~39歳の女性1,000人当たりの出生数」を用いる。変換すると、以下のモデル化となる。

 

(20~39歳の女性による出生数)=(20~39歳の女性人口)÷(1,000)×(20~39歳の女性1,000人当たりの出生数)

 

 20~39歳に限定しているのは、毎年の出生数の95%以上をその年齢範囲が占めており、限定することで分析の理解が進むためである。

 

 まず下記にある「(20~39歳女性による)出生数」の推移を見る。1970年、1990年、2009年とおよそ20年ごとの推移である。それを見ると、1970年の190万人が1990年には70万人以上減少し、その19年後にはさらに16万人以上が減少したことで出生数は102万人に落ち込んだことが読み取れる。

(20~39歳)出生数の推移
(20~39歳)出生数の推移

 モデル化に当てはめてみると、「女性人口」、「女性人口千人当たりの出生数」のいずれも減少していることが下記のグラフにより理解できる。さて、この2つの直接要因のどちらがより大きな影響を与えているのであろうか?

(20~39歳)女性人口の推移
(20~39歳)女性人口の推移
(20~39歳)女性人口千人当たりの出生数
(20~39歳)女性人口千人当たりの出生数

 次に「1970年から1990年の20年間」と「1990年から2009年の19年間」の出生数の変化に対して、各直接要因の実際の影響度を数字にすると以下になる。

(20~39歳)出生数の要因別増減数
(20~39歳)出生数の要因別増減数

 「1970年から1990年の20年間」と「1990年から2009年の19年間」のいずれにおいても「出生率要因」が「人口要因」よりも大きな影響を与えていることが分かる。それに加えて、「1990年から2009年の19年間」については、その前の20年間と比較して、2つの直接要因の影響は小さくなっていることが分かる。

 

 さらに分析を進め、「第一子出生数」だけを見ると以下になる。後半の19年間においては、「人口要因」、「出生率要因」ともに影響は0に近づいている。

(20~39歳)第一子出生数の要因別増減数
(20~39歳)第一子出生数の要因別増減数

 続いて「第二子出生数」を見てみる。これについても、同様に後半19年間は各直接要因の影響は小さくなっていることが分かる。しかしながら「出生率要因」の与える影響は「第一子」に比べて大きいことが読み取れる。

(20~39歳)第二子出生数の要因別増減数
(20~39歳)第二子出生数の要因別増減数

 最後に「第三子以上出生数」を確認する。「第一子」「第二子」と異なる傾向が明らかになる。「人口要因」については、後半19年間はその前に比べて、その影響は減少している一方で、「出生率要因」は拡大している。

(20~39歳)第三子以上出生数の要因別増減数
(20~39歳)第三子以上出生数の要因別増減数

 まとめると以下となる。

・「1970年から1990年の20年間」は、20~39歳の女性の「人口」、「出生率」の低下により出生数は大きく落ち込んだ
・「出生率要因」が「人口要因」よりも大きな影響を与えた
・「1990年から2009年の19年間」は、2つの直接要因の影響は減少している
・「第一子」について、その影響は大きく減少している
・しかしながら、「第二子」「第三子以上」については、「出生率要因」により、その出生数が減少している

 

 そこから2つの結論が導かれる。
①「1970年から1990年の20年間」
⇒晩婚化、シングル化により出生率が低下し、出生数が大きく減少した
②「1990年から2009年の19年間」
⇒「第一子」においては晩婚化、シングル化の影響が減少しているが、晩婚化は「第二子以上」の出生に未だに影響を与え、出生数を減少させている

 

 要は、晩婚化によって「子供をつくることのできる期間」が減少する。それは「第二子以上」の出生に影響を与え、それにより出生数を減少させているのである。

 

 その他に、「子供を多く持たない価値観の広がり」も要因となりうるが、それはむしろ晩婚化、または晩婚化に影響を与えている間接要因によって生まれる価値観と理解できる。従って、その価値観が単独で存在し、「第二子以上」の出生数に影響を与えているとは言えないと考える。

 

 新聞やニュースで、社会現象を一般的なステレオタイプな理由で述べているコメンテーターをよく見る。また形式的な数字だけを示して、ことさら納得感があるような誤解を与えている場合も少なくない。「それって本当?」から分析の好奇心は刺激される。

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