前回、少子化について、出生数を従属変数として、説明変数を人口要因、出生率要因の2つに分けて分析を試みた。さらに出生順位(第一子や第二子等)に分解し、異なる傾向があることを証明した。今回は、さらにメガトレンドをときほぐし、晩婚化がどのように少子化に影響を与えているか、そして今度の影響の方向性について分析している。晩婚化、シングル化に至るまでの要因は別の機会に明らかにする。
今回のポイントは以下になる。
①結婚年齢のバラつきの拡大
②その年に出産した女性が結婚したのは、その年の平均初婚年齢とは異なる
③最近10年間において出生数の減少に歯止めをかけてきた団塊ジュニアのピークアウト
①結婚年齢のバラつきの拡大
晩婚化は周知の事実である。平均初婚年齢は上昇を続け、2009年の女性の平均初婚年齢は28.6歳である。そして平均値の上昇の一方で、そのバラつきが拡大している。
下記のチャートは、その年において結婚した女性の年齢を集計したものである。1970年は90%以上が20代で結婚し、その内、「20~24歳」が65%以上を占める。24歳前後を平均とし、標準偏差が2歳程度であったと推測できる。一方、1990年、2009年を見ると、結婚年齢の広がりが読み取れる。20代の結婚が減少し、30代での結婚が増加しているのである。平均値が28.6歳、標準偏差は5歳以上に及ぶと考えられる。しかも左右対称の分布ではなく、右に歪んだ分布になる。
結婚年齢の上昇は当然に出産開始年齢を遅らせる。下記のチャートは、出産年齢が大きく上昇していることを示している。1つ目のチャートは、1990年の第二子を出産した女性の年齢の構成比と、2009年の第一子を出産した女性の構成比を比較している。2つ目のチャートは、1990年の第三子と2009年の第二子のそれぞれの構成比を比較している。いずれも、ほぼ近い構成比になっていることが読み取れる。
1990年の第二子を出産する年齢 ⇒ 2009年の第一子を出産する年齢
1990年の第三子以上を出産する年齢 ⇒ 2009年の第二子を出産する年齢
すなわち20年前と比べて、一子分、出産年齢が後ろにずれているのである。
これらの意味するところは、平均年齢付近で結婚した場合は、第二子、第三子を持つ可能性が高まるが、それを超えた場合、1人当たりの女性の出産数は減少してしまう、ということである。あくまでも平均値であるが、女性が結婚してから第一子を出産するために2年、第二子までに5年、第三子までに7年かかる。
第二子出産時の年齢が35歳程度であれば、第三子の可能性が出てくるが、それを超えれば可能性は急激に低下する。意欲、体力の低下、妊娠率の低下を伴うからである。結果として30歳を超えて結婚した場合、その出産数は1~2人となる可能性が高くなる。
②その年に出産した女性が結婚したのは、その年の平均初婚年齢とは異なる
つい勘違いしてしまうが、その年に第一子、第二子、あるいは第三子を出産した女性が結婚したのは、その年の平均初婚年齢よりも以前である。統計数値を用いて、例えば「第一子を出産した女性の平均年齢」から「出生までの平均期間」を計算すると「出産した女性の平均結婚年齢」が算出される。それを出産順位別(第一子、第二子など)に示したのが以下のチャートである。2009年に第三子以上を出産した女性の平均結婚年齢は26.2歳である。
これの意味するところは、婚姻年齢の上昇が出産に与える影響にはタイムラグがある、ということである。従って、現在の平均初婚年齢による女性の出産数を反映するのは5~7年後となる。婚姻年齢の上昇が続いていることから、今後は現在の出生率さえ維持することが不可能であることを理解できる。
③最近10年間において出生数の減少に歯止めをかけてきた団塊ジュニアのピークアウト
年間の出生数はここ10年で12万人減少している。しかしながら、これは団塊ジュニア層の貢献があったため、この程度の減少にとどまっている。団塊ジュニアとは、団塊世代の子供であり、その前後も含めて大きな人口グループを形成している。具体的には、1971~1973年生まれを指し、この間は年間200万人以上の出生数である。
2009年の出生数の内、20代が40%を、30代が56%を占めており、最も出生数が多いのは「30~34歳」の年齢階級である。2000年以降、団塊ジュニア世代が30歳を超えてこの年齢階級に参加したため、一定程度の出生数を生み出した。そのため、出生数の減少に歯止めをかける役割を果たしたのである。
出生数は、女性人口と出生率に依存する。前回のブログで書いた「1990年から2009年の19年間」において、人口要因が出生数の減少に影響を与えなかった理由もここにある。以下は、年齢階級別の人口とその年齢階級の女性による出生数を記載したチャートである。いずれも人口と出生数の増減が同じ動きになっていることが理解できる。
チャートから、2000年~2005年の「30~34歳」の人口の増加、2002年以降の「35~39歳」の人口の増加が出生数を上昇させていることが分かる。下記のように第三子の出生数においても、「35~39歳」の人口の増加が影響を与えていることが特徴的である。
しかしながら、出生数の減少を緩やかにしていた30代の女性人口は団塊ジュニア世代が40歳を超えるピークアウトを迎えているため、今後は大きく減少する。今後10年間で20代の女性は120万人以上、30代女性は215万人以上が減少する。
結論として、前回のブログに書いたように、出生数に対して、直接に影響を与える「人口要因」、「出生率要因」に分けて考えると、以下となる。
①人口要因:出生数の中心である30代女性人口が大きく減少するため、出生数に大きな負の影響を与える
②出生率要因:初婚年齢の上昇は持続しており、加えてシングル化も持続している。従って、今後も出生数に負の影響を与えるトレンドは変わらない
将来の出生数を簡易計算してみると以下となる。今後10年程度で年間の出生数は20万人以上、率にして20%以上が減少する。
さてあなたは、あなたの会社はこの事実をどのように考えるであろうか?
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