日本の財政状態を今さらながら考える①(概要編)

 新しい年がはじまった。毎年の終わりに「今年も何も出来なかった・・・」と嘆いている私であるが、今年こそ、高い目標を掲げて、それを達成したいと考えている。もちろん、毎年自分自身が成長することは当たり前であるが、その成長する角度を上げなければ真の成長とは言えない。惰性の角度による成長では毎年ステップアップする目標が遠ざかるばかりである。現在の10度を20度、30度にするためにさらなる努力を続けるべきであると認識している。 このHPにおいても、昨年は8月まで月に3~4本の投稿をしていたものの、9月以降の4ヶ月で1本のみに激減してしまった。今年は月2本の投稿を自分の最低指標に置くこととする。

 ところで私にとって12月の終わりにあきれたニュースといえば、「民主党の数名が新党結成へ」である。理由は、与党である民主党の消費税の増税に反対するため、らしい。それだけ聞けば、国民のためと理解できなくはない。しかし彼らは増税なしにこの難局をどうやって解決していくのか?その代案はまったく聞こえてこない。反対だけなら誰でもできる。代案もなしに「増税反対」では、同調者に新人議員が多いこともあり、単なる選挙対策のPR活動にしか聞こえないのは仕方がない。

 

 現在の難局とは概略すれば以下のような日本の財政状態を指す。まず歳入を見ると、そのほとんどを占める税収(印紙収入含む)は23年度予算(当初予算)においては約41兆円である。その他の収入を含めると合計で約48兆円になる。

平成23年度歳入予算
平成23年度歳入予算

 一方、歳出は社会保障費で約29兆円、国債費(償還費、利払い費)で約22兆円、地方への交付金が約17兆円でこの3つの項目で4分の3を占め、合計では約92兆円である。

 

 歳入48兆円と歳出92兆円の差額の赤字44兆円を埋めるために同額を国債発行して調達している。これが単なる単年度だけなら大きな問題ではないが、この状態が少なくとも10年以上続いており、そのために国債残高が膨れ上がっているのである。これは何もしなければ、まだまだ膨張する。

平成23年度歳出予算
平成23年度歳出予算

 歳入は法人、個人ともに所得の減少は一時的なものではないため、短期間で上昇するとは考えられない。しかしながら、歳出は増える要素が少なくとも3つある。1つは高齢化による医療費、年金といった社会保障費の上昇である。これは毎年0.8~1兆円ずつ増加すると試算されている。2つ目は国債の利払い負担の増加である。毎年30~50兆円もの国債残高の増加は、5千億円程度の利払いを増加させる。国債の利子は、昨年(平成23年)は概ね10年物で1%前後、20年物で1.7~1.8%、40年物で2.1~2.2%である。もちろん国債価格が下落すれば、利払い負担が大きく上昇するリスクもある。3つ目は、東日本大震災による復興費用、原発関連の保障費用や東電救済費用である。これらは合計すれば数兆円規模で済む内容ではない。

 

 国債の発行を抑制し、歳入と歳出のバランスを取るためには、歳入を増加させる必要がある。もちろん無駄な歳出の削減も重要であるが、それだけで40兆円の赤字を埋めることに大きな役割は果たせない。歳入について、労働人口の減少、1人当たり所得の伸び悩み、資産価格の停滞を考えると、分析するまでもなく、所得税は増えない。まして、内需の減少、グローバル競争の激化の中で法人所得もまた短期間で大きく上昇することも考えにくい。

 

 従って、日本の財政状態を正常にするためには、所得税、法人税以外の安定的な歳入の増加と将来的な歳出の抑制が必要になることが分かる。将来的な歳出の抑制とは年金制度の改革が伴うため、短期的な対応は難しい。しかしながら、制度設計に無理があるのは自明であるため、今から将来の歳出抑制策を打たないと傷は深くなるばかりである。

 

 短期的に日本の経済状態が悪いから増税できないと言っていては、未来永劫増税できないことになってしまう。即ち、現代のツケを後世に残すことにほかならない。このままでは破綻危機に陥る可能性も高まるばかりである。もし、そうした事態になれば、急激な歳出削減が求められ、結局は税金の増加、歳出カットになり、大きな社会的痛みを避けることは出来ない。そうであれば、出来るだけ早く備えをして、ソフトランディングへ導くことが結局は国民の痛みは少ないはずである。

 

 無責任な消費税の増税反対ではなく、将来の日本を見据えた責任ある政治をするべきであり、それは我々個人に対しても覚悟を求められる。短期的な費用を嫌って、大きな代償を払うケースはたくさんある。例えば自動車のメンテナンス費用をケチってメンテナンスをしなければ、自動車の使用寿命が短くなり、結局また新しい自動車を買う羽目になってしまう。我々の置かれている状態も同じである。現在の債務に目をつぶり、今の生活だけを見ることは、結局、将来の生活不安を増幅させることにしかならない。言わば二律背反であり、一方の効用(この場合、増税しないことで現在の生活が悪くならないこと)の最大化は、もう一方の効用(将来の生活不安を減じること)の最小化を導くのである。単純な短期的視点ではなく、将来を見据えた長期的視点に立脚しなければなるまい。もちろん、政府の国民の理解を得られるようなリーダーシップを発揮することが前提ではあるが・・・。

 

 さて次回以降、今さらとは言え、日本の財政状態について、歳入と歳出の観点からもう少し掘り下げて、現状を見てみたい。

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