高速バス会社の収益構造

 皆様、かなりのご無沙汰となってしまいました。なんとこれが今年2回目とはなんとも情けない。年初の目標はどこへやらである。私が何をしていたかと言うと、今年に入ってから新規事業の立ち上げに奔走していた。なんとか立ち上がったので、今後は目標にした月2回の投稿を守りたいと切に願う。

 さて、GW中、格安高速バスツアー会社の運営体制が社会問題として浮上した。4月29日に7人が死亡する事故が発生し、新聞、ニュースで連日の報道がある。規制の必要性も叫ばれている。私も以前から高速バスの料金の安さには驚いたことがあったため、今回、精査が甘いものの、高速バス会社の収益構造をシュミレーションしてみた。業界のことは詳しくないため、思い違いや前提が間違っている可能性もあるが、ご勘弁いただきたい。

 

 高速バスツアーへの参入は、バスと運転手がいれば可能であり、その障壁は高くないと考える。参入障壁といえるのは大規模投資が必要なバスの購入であろう。今回、費用構造を単純化し、変動費を設備費用(バス自体の費用)、人件費(運転手)、高速道路料金に分け、その他はすべて固定費とした。大きなバス会社は想定せず、費用を最小限度に抑えるバス1台、従業員0人(運転手を含まない)で考えている。そのため、費用は極小化されていると考えて頂きたい。この架空バス会社をA社とする。

 

(A社の概要)
・所有バス:1台
・従業員:1名(代表者のみ)、運転手は別
・営業内容:大阪~東京の夜行バスを毎日運行(1日目大阪~東京、2日目東京~大阪を繰り返す)
・大阪~東京の走行距離:550km

 

 まず設備費用を考える。設備費用は大型バスの減価償却費、燃料費、メンテナンス費用をすべて走行1kmあたりに換算して変動費として考える(減価償却費は固定費であるが、走行距離とともに価値が減じると考えて変動費的にとらえている)。大型バスの寿命は普通自動車に比べてかなり長い。ネットで調べたところ、100万km前後が多かったため、100万kmを寿命とした。その他は以下の通りである。結論として設備費用はkm当たり74円となる。

設備費
設備費

次に人件費である。これは運転手とその宿泊費のみにしている。人件費はバス運転手の年収が300万前後との報道から、片道15,000円としている。

 

 最後が固定費である。これには各種税金や保険料、広告宣伝費、洗車代など、ここでも最小限度にしている。まったく想定できないのが任意保険の保険料である。記載は車両価格の2%である。

 

 かたや収益は東京~大阪のチケット代を3,980円と設定した。ダイレクトに販売できれば良いが、中小のバス会社は旅行会社などに販売を委託するケースが多いと考え、旅行会社の販売手数料を15%とした。

 結果として、A社の大阪~東京の往復便は、往復で45席が埋まれば変動費を回収できる。50席のバスであれば5割の空席は固定費分赤字になる。さてこのビジネスに魅力があるのか否か?

変動費回収点
変動費回収点

 もちろん、繁閑の激しいビジネスであり、通常は週末が忙しく、年末年始、正月、GW、お盆休み、学生の夏休みなどは平日であっても高い稼動が見込める。しかしながら、コントロールできる費用は少なく、景気や燃料費高騰の影響が短期間に現れる。そのため過当競争はどこかに無理が生じてしまうため、ギリギリの運営を迫られる会社が多いことも想像に難しくない。そこに規制をすれば(○○km以上は運転手2名体制など)、バス料金が高くなる。規制をなくせば、自由競争を促し料金は下落に向かうが、無理な運営を助長するため安全性に問題がでる。原発も同じことが言えてしまう。そのコストを負担する覚悟があるのか否か?である。ジャッジには全体観が必要であるが、全体観を許容しない部分観の国民が多いことが状況をややこしくする、あるいは政治家の迷走を招くのである。

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