連日、シャープの危機を伝えるニュースが報道されている。つい5年前まで、世界の亀山モデルとしてブランド力を持ち、超優良企業として認められていた日本を代表する電機会社の苦境はにわかに信じがたい。前期決算においてもパナソニック、ソニー、シャープといった企業が大きな赤字となり、話題となった。これは単発的な出来事ではなく、構造的な問題であり、「早晩解決されて、また元気になります」といった類の話ではない。統計数値を見れば、電機業界の置かれた苦境が明らかになる。
まったくの疑いなく、長らく日本を支えてきたのは自動車と電機業界である。この両輪は日本の輸出の50%近くを稼いできた。日本で製品をつくり、大きな雇用と経済効果を生み出してきた。しかし、近年、片方の車輪である電機業界の輸出は大きく減少している。
下図の通り、全体の輸出に対する構成比は23.6%(2003年)⇒17.5%(2012年4月までの1年間)となり、金額ベースにおいてもピークの7割に満たない。金額ベースでは自動車も同じような数値にあるが、自動車は昨年の震災やタイの洪水というサプライサイドの問題が大きく、直近を見ると金額は増加傾向にある。
しかしながら電機はそうではない。同じように不況が伝えれらる半導体、テレビに代表される映像機器、携帯電話に代表される通信機器は真っ逆さまに輸出金額が減少しているのである。世界の景気低迷や国内情勢の悪化にも一因は求められるが、一方で映像機器や通信機器の輸入金額はそのようにはなっていない。映像機器はエコポイントの終了により輸入金額は減少しているが、それまでは伸張していた。通信機器に至っては、2年半程度で70%、金額にして7千億円程度増加している。これらの多くは日本メーカーが海外で生産したものの輸入ではない。
これらの数字を見れば、もはや日本で生産して輸出する形態は終わったと見るべきであろう。自動車はまだ延命の余地があるが、十年単位で続くと考えるのは無理がある。
また別の機会に改めて触れたいが、特に消費者向け電気製品の多くはモジュール化され、設備さえ導入すれば、技術を持たない台湾、中国、韓国企業がつくることが容易になってしまった。長らく研究開発投資を行い、苦労して製品化し、市場が拡大して利益を出す、という段階で新興企業が雪崩れのように参入してくる。日本企業は投資回収ができずに、市場からの撤退を余儀なくされている。それらの現象は多くの製品に見ることができる。
いくつかの電機企業はリストラの真っ只中にあり、当然に未来に向けた研究開発投資は大きく削減される。従って、未来の新しい技術づくり、製品づくりの力は落ちていく。シャープの苦境は、日本を長期にわたり支えてきた両輪の一つを失いつつあることを示している。
よく聞く話として、日本はこれから製造業に頼らず、サービス産業化を進め、雇用と冨を生み出すべきだ、とったものがある。将来的にはそのような備えが必要であることは認めるが、実際には、製造業の好況が始動になって、サービス業の需要を生み出すのである。トヨタが元気なことによって人材サービス、出張に関わる交通、宿泊需要、メンテナンス、システム更新といった需要がつながっていくのである。サービス業はサービス業単独で存在しているのではない。
その会社名を聞いただけで、良いイメージが浮かび、日本が誇る会社であるパナソニック、ソニー、シャープが復活する日が来るのか?日本と同じように沈まないとことを切に願っている。踏ん張れシャープ!ホンハイに負けるな!
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