更新するたびに数ヶ月ぶりが定着している。前回の投稿以降、色々と生活に変化があったにしても、3ヵ月も書けないとは情けない。私が何をしていたかと言うと、7年以上勤務した愛着ある会社を離れ、性懲りもなくまた別の道を選択することになった。さて、今回はタイトル通り、株式市場について独自の視点で書きたい。いわゆる「アベノミクス」で急騰した株式市場は5月23日の下落ショック、6月の調整局面を乗り切り、先日(7/26)の大きな下落はあったものの、7月以降堅調さを維持しているように思える。
業種別ETFの株価推移を見ると、概ねこの半年間で1.2~1.5倍に上昇している。現在までの株式市場はいわゆる「金融相場」であり、金融緩和、それを契機とする円安に支えられている(加えて米国経済の回復が影響している)。そのため、輸出関連株である自動車、機械関連株が好調である。医薬品やエネルギー関連など、上昇率が弱い業種も存在するが、代表的な会社の株価は概ね1.2~1.5倍程度の上昇が見られる。
さて、株価は何によって決まるのであろうか?まず1つは「ファンダメンタル」と呼ばれる、その会社の収益性によって決定されると考えられる。簡単に言えば、株主が将来に渡って得られる利益の合計額(配当+株式値上がり益)が株価を決めるとする考え方である。そのため、PER(株価収益率)、EPS(1株当たり利益)といった指標が株価の妥当性を判断するために使用される。理論上の株価を計算する配当割引モデルなどの根拠ともなっている。
もう1つは株式の需給関係、いわゆる「トレンド」が株価に大きな影響を与えている。数十年前と異なり、現在のマーケットの参加者は世界中に広がり、その投資資金が巨額であり、なおかつプログラム売買により取引回数が膨大になっている。そのため、短期的にはトレンドの影響を色濃く受ける。そして、トレンドは特に中小型株の株価を大きくスイングさせる。トレンドにはマーケット参加者の思惑が強く現れるが、昨今、特に目立つのがバイオ関連株の激しい株価変動である。
バイオ関連株には真に有望な会社があり、先行期待を織り込んでいることは否定しない。しかし一方で多くのバイオ関連株は、トレンドだけで上昇しているのであって、ファンダメンタルの影響があるとは思えまい。なぜならこれらの会社の多くは赤字であり、「将来大きな利益があがるという期待」が急に高まってはいないからである。
ところで、バイオ関連株で私が思いつくのは、アンジェスMGという会社である。2002年秋に大学発ベンチャーとして鳴り物入りで上場し、その後の株価の急騰と急落は以下に示すとおりである。さて、この会社はその後、市場の期待に応えて大きな利益を生んだのか?この会社は上場来、一度も利益はなく、売上を上回る損失を計上し続けている。もちろん会社のロマンや事業の意義、中身は分からないが、公表されている情報をもとに考えれば、「どうしようもない会社」である。その結果として、最高値660,000円の株価は一時、12,265円と98%の下落を記録している。
しかし、この会社の株価も大きく上昇している。ファンダメンタルは悪化する一方であり、良いニュースはまったく聞こえてこない。
ところで、現在までの日本の株価の上昇を支えているのは外国人投資家だと言われている。先述の通り、株価は需給関係によって決まるため、「買い手」が「売り手」よりも多ければ上昇するし、逆であれば下落する。下図のように、日本内の投資家は法人も個人もほとんどの週で売り越しであるが、外国人投資家は買い越しである。これが日本の株式市場を支えている。
では外国人投資家は、バイオ関連株を買っているのか?Noである。外国人投資家の多くは、年金基金や委託を受けているヘッジファンドであり、プロとして投資活動をしている。多くの日本人に誤解されるが、株式投資は決してギャンブルではない。しかし、値動きの激しさから分かるように、バイオ関連株はギャンブルに近いと言える。このような危険な銘柄に、外国人投資家が多くの投資をするとは考えにくい。
その根拠として、バイオ関連株は自動車や電機に比べて、浮動株(実際に市場で売買されている株式が全体に占める割合)が多いものの、外国人の持ち株比率が低いことがあげられる。輸出関連株の外国人持ち株比率は20~35%であるが、バイオ関連株は1~3%程度である。では、バイオ関連株を誰が買っているのか?国内法人投資家も責任ある立場として、手を出しにくいことを考えれば、個人投資家が多くを占めるものと思われる。彼らはファンダメンタルには目もくれず、急騰時に興奮の坩堝で買いに走り、熱気が冷めるとあきらめ、去っていく。
おそらくバイオ関連株はこのような流れで急騰する。
①株式市場全体の上げ相場にのって、買いポジションが多くなる(買う人が多くなる)
②少数のポジションを取った人がその正当性を語り、商売を拡大したい証券会社、えせストラティジストが目標株価の引き上げなどで扇動する
③チャレンジャー(中期追随者)が少し遅れて買いポジションで参入
④③により株価が上昇するため、②の正確性が実証される
⑤それを見たフォロワー(後期追随者)がさらに買いポジションで参入、同時に利益確定売りが出て株価は下落するが、②の早期参入者は利益を獲得する
もちろんこんなに単純な図式ではないであろうが、少数の市場参加者の思惑で需給がコントロールされることに大差はない。株式参加者はいかなるときも、熱狂の中で我を失い、失望の中にかすかな希望の光を探し、絶望の中であきらめ、忘れようとする。要はフォロワーに待っているのは「塩漬け」である。「損切り」は早目が望ましいと自らに言い聞かせる今日この頃である。
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