完全失業率の改善は本当か?

 8月下旬よりインドに赴任している。海外で仕事をすることは非常に有意義になると考えているが、中々思うようにいかない点はやはり多い。インドの株式市場や日本企業の進出状況、ビジネスチャンスや制約といったことも今後、触れていきたい。今回は、これとは関係なく、久しぶりに日本の労働市場の分析を書く。

 完全失業率が6月に3.9%となり、2008年10月以来、4%を下回った。2009年7月に5.5%まで上昇したが、2011年以降、じりじりと改善を続けている状態にある。さて、本当に雇用情勢は改善しているのか?

出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成

 確かに完全失業率の低下と同じように、完全失業者についても2009年336万人から2012年285万人へ約50万人減少している。それでは雇用者数は伸びているのか?2009年に比べれば増えているが、4年間で20万人程度、0.38%増では、改善したと言えるレベルではない。雇用情勢の改善したアメリカの雇用増が毎月16~20万人といったことと比べると、頼りない数値である(もちろん人口や労働市場の規模は日本より大きいが)。さらに正規雇用者は減少を続けており、増加しているのは相変わらず非正規雇用者である。正規雇用率(労働力人口に占める正規雇用者の比率)の上昇は見られない一方、非正規雇用率は増加を続けている。

出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成

 結果として、2009年から2012年の増減を見てみると、完全失業者の減少は、雇用者の増加に裏付けられているとは言えないことが分かる。それではなぜ、完全失業率は減少しているのか?一つの要因として、日本の労働力人口の減少があげられる。少子高齢化によって、新たに労働市場に参入する労働者(新規学卒者等)の数よりも、リタイヤする労働者(及び仕事を探すことをあきらめた人)が多いのである。2007年以降労働力人口は減少を続けており、2007年6,684万人から2012年6,555万人へ129万人減少している。特に直近2年間においては77万人の減少である。

出所:労働力調査より作成
出所:労働力調査より作成
出所:労働力調査から作成
出所:労働力調査から作成

「完全失業率=完全失業者数÷労働力人口」

 

 まとめると以下となる。
・完全失業率の低下により、表面的に雇用は改善しているように思える
・雇用者数は増加しているが、力強いとは言えない
・内訳を見ると正規雇用者は減少、非正規雇用者が増加している
・完全失業率の減少は、分母である労働力人口の減少によって、良い数値となっている

 

 さらに男女間、年齢階級において、まったく違う景色が見えてくるが、それについては次回以降、詳しく述べてみたい。

コメントをお書きください

コメント: 1
  • #1

    sprawdź sam (金曜日, 03 11月 2017 18:00)

    nieprzeznaczenie

Hey Visitor!