さて前回に引き続きインド経済概況Part2を予定していたが、今回はホットな話題である消費者物価の現状を分析してみたい。インド経済概況の続きは次回とする。10月31日に日銀から「経済・物価情勢の展望(10月)」が発表された。内容は強気であり、消費者物価上昇率2%達成に自信を深めているようである。
内容については、内需の堅調な推移があると述べられている。どの指標を基にしたかは不明であるが、消費動向の実績値として以下のデータを紹介する。
・9月全国百貨店売上高(日本百貨店協会):前年同月比+2.8%
・7~9月チェーンストア販売統計(日本チェーンストア協会):前年同期比±0%
・9月新車販売台数(乗用車のみ、軽自動車を含まない、日本自動車販売協会連合会):前年同月比+12.7%
全国百貨店売上高は10都市で+4.3%、それ以外は-0.1%となっている。新車販売台数は、エコカー減税の反動減が一巡したことも大きな上昇につながっている。この3つの指標を見る限り、確かに消費動向は活発化しているように思える。しかしながら、それが消費者物価の上昇に結びつくかどうかは別問題である。
次に消費者物価指数(以下「CPI」、CPIは2010年=100としている)を見ると、4月以降の上昇を確認できる。さて、これを見て、「なるほど、CPIは上昇しており、日本経済の先行きは明るい」と判断するのは早い。その前に、「どのような商品の物価が上がっているのか?」を分析していくことが重要である。
「生鮮品」については、7月以降伸びているが、チャートを見る限り、商品の性格上、価格の上下動が激しい。「家庭用耐久財」(掃除機、洗濯機、エアコン等白物家電が中心)、「教養娯楽用耐久財」(パソコン、デジカメ等IT家電が中心)は横ばいあるいは下落傾向が続いている。「被服及び履物」(衣料品が中心)は9月に大きく伸びているように見えるが、春夏、秋冬の投入シーズンに上昇し、バーゲンシーズンに下落するサイクルの一環に過ぎない。「交通・通信」は4月以降、顕著な伸びが見られる。しかし種明かしをすると、7~8月は毎年夏休みのため「交通」の指数が上昇することが寄与し、それ以外の月は「ガソリン」の伸びが貢献しているのである。
結局、CPIが伸びている商品は「光熱・水道」や「エネルギー」(光熱・水道に一部含まれる)程度しか見当たらず、日銀や阿部総理が言うような力強さは確認できない。「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」のチャートを見ると、最初のCPIのチャートとは、まったく違う景色が見えるであろう。
今回は軽い分析であるが、デフレ、CPIについてはさらに分析をした資料があり、独自の視点と合わせて近々投稿したい。テレビ、新聞、ネットで流されるニュースは、都合の良い資料のみを出して、一方からの視点を提供しているだけである。決して、鵜呑みにせず、「本当か?」と考え、仮説を立て、データを見れば、自分なりの視点を見出すことができる。日経を読んで経済が分かった気になる「自称物知り」にも要注意である。
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